「バーソは自由に」

考え方はいろいろあるから面白い

 困難でも喜びのゲームを楽しむ『少女パレアナ』の視点。 


 エレナ・ポーターが1913年に書いた『少女パレアナ』という本があります。

 書き出しは私の好きな『赤毛のアン』に似ていますが、それより10倍感動しました。2日間で3回読み返しましたが、3回目も涙があふれ出ました。これは友人のエリアンダーさんから紹介された、私としては近来にないと思えた良書です。

 場面は100年ほど前のアメリカ。両親を失って孤児となった11歳の少女が、義務感だけは心得ている気難しい叔母さんに引き取られますが、困難な状況にあってもいつも強い意志と努力によって《喜べる理由》を探し出すゲームをすることで、荒れていた町の人々の心を喜びで明るくしていくお話です。

「パレアナ」は、当時アメリカ中の店やホテルの名前になるなどのブームになり、ウェブスター英語辞典には《喜悦》という意味の名詞として掲載され、「パレアナイズム(極端な楽天主義)」という心理学用語を生みました。

 今回は、パレアナの《喜べる言葉》をピックアップした感動の“さわり”集です。

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 『楢山節考』。姥捨て山伝説から見る高齢者の幸いとは? 


 その貧しい村では七十歳になった親を子が背負い、お山に捨てに行く――――
 母親は言っていた。「おれが山に行くときゃあ、きっと雪が降るぞ」


深沢七郎の短編小説『楢山節考』は、間もなく七十歳になるおりんが、山深い貧しい部落の因習に従って冬の楢山に捨てられる話です。
 
(あらすじ)
 おりんは捨てられる日を早めるために、丈夫な前歯を自分で石臼(いしうす)に打ち据えて折っていた。
 あと三日で新年になる極寒の夜、息子の辰平はおりんを背負い、いやいや楢山を登っていく。
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 頂上に来たら、おりんは冷たい筵(むしろ)の上に座り、辰平の背中を押して帰らせた。
 辰平は帰り道で、おりんが言っていた通り、雪が降っていることを知って感動する。雪の中で凍死するのは、餓死より苦しみが少なく、幸いなのである

 辰平が家に帰ると、おりんの綿入れと帯はすでに孫たちが使っていた。

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 『賢者の贈り物』は、人間の気遣いと信仰の関係を語っている。 


 オー・ヘンリーが1905年に発表した『賢者の贈り物』という短編小説がある。

 私は子どもの頃に読んだだけだが、今回『青空文庫』で読み直して驚いたのは主人公の夫婦が若かったことだ。
 話の中に懐中時計が出てくるせいで老年夫婦の話だと思い込んでいたが、夫が22歳だと分かったとき、ああ、当時のアメリカには、その日暮らしの貧乏な若い夫婦がいて、互いに精一杯愛情を表そうとした話があったほど、清く貧しく善き純粋な時代だったのか、と思ったら、どっと涙腺がゆるんできた。

 ウイルス問題で何かと心細くなる今日この頃。この「賢者」とはだれなのか?という点をバーソの視点で解釈しました。


『賢者の贈り物』のあらすじ

 舞台はクリスマスの前日。ある若い貧しい夫婦は贈り物をする金がなかったので、二人とも自分が大事にしていた唯一の「宝物」を売ることを決断した。
 妻デラの宝物は、シバの女王(※1)さえ羨むような美しい「長い髪」だったが、それをバッサリ切って売った金で、夫の金の懐中時計に合う「プラチナの時計鎖」を買った。
 夫ジムの宝物は、祖父と父から受け継いできたその金の「懐中時計」だったが、こっそり質に入れ、妻の美しい髪によく似合いそうな宝石入りの「亀甲の髪飾り」を買っていた。
 そしてイヴの夜。
 二人が心を込めて贈り合ったクリスマスプレゼントは、互いに使えない物だった。

   

 こうすれば勝てた。『ヴェニスの商人』の金貸しシャイロック。 


「ねえねえ、ご隠居。すごい儲け話、聞きましたよ。いくら借金しても破産しね
えんです」
「お、熊さん。現代貨幣理論、MMTをナマ聞きかじったな」
「おれっちも、この際、どんどん借金しまくって、豪勢な暮らしでもしてみんと
キャンディと思って」
「うむ、MMTとは《国が国債をどれだけ発行しても破産しない》という理論だ。
自国通貨を発行できる国の場合はいいとしても、個人には通用しないぞ。紙幣は
勝手に刷ったら捕まる。金を借りたければ担保が必要だが、お前さんには財産が
ない」
「そうです。湯たんぽもきりたんぽもねえですが、おれっちは、この自慢の体を
担保にして」
「熊さん、体は駄目だ、担保にならない。シェイクスピアの戯曲に、こんな話が
ある。アントニーオというイタリア人が友人の借金の保証人になり、シャイロッ
クという金貸しは、《期日までに返せなければ彼の肉1ポンドをいただく》とい
う証文を書かせた。1ポンドは約450グラムだ」

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「ええと、確か、頭のいい裁判官が『肉は取ってもいいが、血は一滴も取っては
ならない』と判決を出したので、『ヴェニスの証人』が負けてしまった話だった
ですかね」
「いや、お前さんのアクセントは若干語尾上がりだから『しょうにん』が裁判の
『証』と聞こえる。正確には語尾下がりに発音するのだよ。そうすれば商売の
人』と聞こえる。『ヴェニスの商人』とは金を借りたアントニーオのほうだ。
『商人』の元の英語はマーチャント(merchant)で、マーチャントとは普通の
《商人》より取引量の多い《貿易商》なんだな」
「そうでしたか。でもまあ、450グラムならたいしたことねえ。ジュウジュウ言
う焼肉を1キロも食えば、すぐ補充できます」
「いや、心臓すれすれの肉を切り取られたら命にかかわるぞ」
「そうか。でも、それにしてもですね、ご隠居。肉を切れば血が少しは出るのは
当たり前。量るときに多少の誤差が出るのも当たり前。肉を1ポンドを取っても
いいが、血を一滴も取ってはいけないという判決は、常識を外れてる、屁理屈だ、
難くせだ、とシャイロックはなぜ反論しなかったんですかね」

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